弾道関連用語

弾道

定義・特徴:ショット後のボールの飛行軌道全般を指す。ボールがクラブに当たってから着地に至るまでの高さや曲がり、方向性の特徴を総称した用語で、「高い弾道」「低い弾道」「弾道が安定している」などと表現する。弾道は打ち出し角やスピン量、クラブのロフト角、さらには風など様々な要素に影響される。

補足:弾道を把握することはショットの改善やクラブ選びに重要である。測定機器を使えば弾道の詳細データ(打ち出し角、最高到達点、スピン量、着地角など)を得ることができ、自身の典型的な球筋や飛距離の傾向を分析できる。「理想的な弾道」とはプレーヤーの目標次第で異なるが、例えばドライバーでは高弾道低スピンで飛距離を稼ぎ、アイアンでは高弾道でグリーンに止まりやすい球を狙うことが多い。

打ち出し角

定義・特徴:ボールがクラブフェースを離れた直後に地面(水平方向)に対して飛び出す角度のこと。いわゆる縦方向の初期角度であり、この角度が大きい(高い)ほど高弾道になり、小さいほど低く低弾道の球となる。適正な打ち出し角はクラブの種類やヘッドスピードによって異なり、例えばドライバーでは一般に約13〜15度程度が理想とされる。

補足:打ち出し角は主にクラブのロフト角や入射角(アタックアングル)、そしてインパクト時のハンドファースト具合などによって決まる。打ち出し角が高すぎると球が上がりすぎてキャリーは出るもののランが出にくくなり、風にも影響されやすくなる。一方で低すぎると十分なキャリーが得られず飛距離をロスする可能性がある。適切な打ち出し角を得るために、自分のスイングに合ったロフトのクラブを選ぶことが重要である。

左右打ち出し角

定義・特徴:ターゲット(狙い線)に対してボールが最初に飛び出した方向の角度。左方向へ何度、あるいは右方向へ何度ずれてスタートしたかを示す数値で、ショットの方向性を評価する指標となる。ポジティブな値を右方向、ネガティブな値を左方向の打ち出しとして表現する場合が多い。

補足:左右打ち出し角はインパクト時のフェースの向きやスイング軌道によって決まる。一般にボールの初期方向はフェース向きの影響が大きく(約8割)、スイング軌道の影響は残り(約2割)とされる。左右打ち出し角の管理は方向性安定の第一歩であり、例えば「毎回目標の右5度以内に収める」など目標を立てて練習することで球筋のばらつきを減らすことができる。

最高到達点

定義・特徴:ボールが飛行中に達する最大の高さのこと。ショットの弾道がどこまで上昇したかを示す指標で、単位は通常ヤードやメートルで表される。最高到達点が高いほど山なりの高弾道であり、逆に低いほど弾道が平坦(低弾道)であることを意味する。

補足:最高到達点は打ち出し角とスピン量の影響を強く受ける。高いロフトや十分なバックスピンがかかったショットは弾道が高く上がり、最高到達点も大きくなる。例えばグリーンに止まりやすいショットにはある程度の高さが必要で、アイアンやウェッジでは高い最高到達点が好ましい。一方、強風下では弾道を抑えるために敢えて最高到達点の低い低弾道のショットを打つケースもある。

着地角

定義・特徴:ボールが落下するときの地面に対する角度。弾道の終末段階での降下角度であり、この角度が大きい(急角度で落ちる)ほどボールは着地後に止まりやすく、小さい(浅い角度で落ちる)ほどランが出やすい。着地角は主にボールの最高到達点やスピン量によって決まり、数値は度数で表される。

補足:着地角はグリーン上でボールを止められるかどうかに直結するため、特にアイアンショットやアプローチで重要視される。例えば高い弾道でバックスピンが多いショットは着地角が大きくなり、グリーン上でボールが「止まる」ショットになる。一方、低い弾道でスピンの少ない球は着地角が小さく、ランが大きく出てトータル飛距離は伸びるがグリーンで止まりにくい。自分のショットの着地角を把握することで、コース上でどれくらい転がるかを予測しやすくなる。

滞空時間

定義・特徴:ボールが飛び出してから着地するまで空中にある時間の長さ。単位は秒で表され、ショットの弾道特性を示す一つの要素となる。高弾道でスピン量が適切な球ほど滞空時間は長くなり、低く押さえた球やスピンの少ない球ほど滞空時間は短くなる傾向がある。

補足:滞空時間が長いショットはそれだけキャリーが稼げる可能性が高く、例えばドライバーでビッグキャリーを出すにはしっかりボールを上げてある程度の滞空時間を確保する必要がある。一方、風の影響も受けやすいため、強風時にはあえて滞空時間を短くする(低く抑える)ショットも求められる。滞空時間の長短は弾道の見栄えや球の挙動にも影響し、プロの放つ高いキャリーのショットは観客を沸かせる要素の一つになっている。

高弾道

定義・特徴:平均よりも高い高さで飛ぶ弾道のこと。ボールの軌道が山なりに高く描かれ、最高到達点が一般的な基準より高いショットを指す。高弾道の球は落下角も大きくなりやすいため、着地後にボールが止まりやすいという特徴がある。

補足:高弾道のショットは主に十分なロフト角や強いバックスピンによって生み出される。アイアンショットでピンをデッドに狙う際や、グリーンでボールを止めたい場合に有効である。一方で向かい風には弱く、風によって大きく飛距離をロスしたり曲げられたりするリスクもある。プレーヤーは状況に応じて高弾道と低弾道を打ち分ける必要があり、高弾道は主に順風や無風でピンを狙うとき、ソフトに着地させたいときに重宝する。

低弾道

定義・特徴:平均よりも低い高さで飛ぶ弾道のこと。ボールがあまり上がらずに比較的平坦な軌道を描き、最高到達点が低めのショットを指す。低弾道の球は着地角が小さいため、落ちてから前方に転がるランが多く出る傾向がある。

補足:低弾道のショットは強風下や狭いホールで弾道を抑えて打ちたいときに有効である。ロフトを立てて打つ、ハンドファーストに当てる、スピン量を抑えるといった技術で低い弾道を実現できる。例えばリンクスコースでのティーショットや風に負けない低いスリークウォーターショットなど、低弾道を武器とするプレーヤーも多い。ただし弾道が低すぎるとキャリーが不足しやすいため、状況に応じた加減が重要である。

スピン関連用語

バックスピン

定義・特徴:ボールが前方へ飛んでいく方向に対して後方(手前側)へ向かってかかる回転のこと。インパクトでクラブフェースによりボールに下向きの力が加わることで生じる逆回転であり、ほとんどのショットには程度の差はあれバックスピンがかかっている。バックスピンがしっかりかかった球は揚力を生み出してボールがよく浮き、安定した高い弾道になりやすい。

補足:バックスピン量が多いほどボールは空中で失速しにくく、また着地後に止まりやすい(場合によっては後退する)という利点がある。グリーン上にボールを止めるアプローチやアイアンショットでは十分なバックスピンが必要とされる。一方、ドライバーショットでバックスピンが多すぎると弾道が吹き上がって飛距離をロスする原因にもなる。適正なバックスピン量はクラブごとに異なり、プレーヤーはスイングやクラブ選択でスピン量をコントロールすることが重要である。

サイドスピン

定義・特徴:ボールにかかる横方向の回転のこと。進行方向に対して左右いずれかへ回転する力が加わることで、ボールが曲がる原因となるスピン成分である。例えばクラブフェースが目標に対し開いて当たると右回転(サイドスピン)が生じてボールは右に曲がり、逆に閉じて当たると左回転のスピンが生じて左に曲がる。

補足:実際にはサイドスピン単独で存在するというより、バックスピンの軸が傾くことで横回転成分が発生している(スピン軸の項目参照)。弾道測定器ではサイドスピン量を示す場合もあるが、現在ではスピン軸の傾き角度で左右の曲がりを評価することが一般的だ。サイドスピンが大きい(スピン軸が大きく傾いている)ショットは曲がり幅も大きく、意図しないスライスやフックの原因となる。安定したショットを打つには、インパクト時のフェースとスイング軌道の関係を整えサイドスピンを抑えることが重要である。

スピン量

定義・特徴:インパクト直後のボールの回転数(スピンの量)を指す。通常「スピン量○○回転/分(RPM)」のように1分あたりの回転数で表現され、数値が大きいほどスピンが多く小さいほどスピンが少ないことを意味する。クラブごとに適正なスピン量の目安があり、例えばドライバーならおよそ2000~3000RPM前後、ショートアイアンなら6000~10000RPM前後などと言われる。

補足:スピン量はショットの高さや飛距離、ランに大きく影響する要素である。スピン量が多いと球は高く上がりやすいが、吹き上がりすぎると飛距離ロスにつながることもある。一方スピン量が少ない球は風の影響を受けにくくランも出やすいが、極端に少ないと揚力不足で弾道が安定しなかったりグリーンで止まりにくくなったりする。各自のヘッドスピードや打ち出し角に見合った適正スピン量を追求することが、飛距離とコントロールの両立に重要となる。

スピン軸

定義・特徴:ボールが回転する軸(中心線)のこと。インパクト時の条件によりボールには後方へのスピン軸が設定されるが、その軸が垂直からどれだけ傾いているかでボールの曲がりが決まる。軸が垂直に近ければ純粋なバックスピンとなりボールはまっすぐ飛ぶが、軸が左や右に傾く(斜めのスピン軸になる)とその分だけ横回転が混ざり、ボールは傾いた方向へ曲がって飛ぶ。

補足:スピン軸はフェースの向きとスイング軌道のズレによって生まれる。たとえばスイング軌道に対してフェースが開いていればスピン軸は右に傾き、逆にフェースが被っていれば左に傾く。スピン軸の傾きが大きいほど曲がり幅の大きなショット(スライスやフック)となり、傾きが小さければほぼストレートな球筋になる。現在の高性能な弾道計測器ではサイドスピン量の代わりにスピン軸の傾斜角度を示すことで球の曲がり度合いを評価している。

スピン軸角

定義・特徴:ボールのスピン軸が垂直に対して傾いている角度のこと。単位は度で表され、この角度が±0度に近ければスピン軸が真っ直ぐ(縦回転のみ)、プラスやマイナスの角度が大きいほど軸が傾斜しており、その分ショットが左右に曲がることを意味する。プラスのスピン軸角は一般に右回転(フェード/スライス系)、マイナスは左回転(ドロー/フック系)として扱われる。

補足:スピン軸角はショットの曲がりを数値化した指標であり、弾道解析では非常に重要である。例えばスピン軸角が0度なら理論上真っ直ぐな球、10度右傾(+10°)ならフェード回転がかかっている球筋といった具合に判断できる。傾きが大きい場合はフェースと軌道の不一致が大きいことを示しており、改善にはスイング軌道やフェース向きの見直しが必要になる。上級者は意図的にスピン軸角をコントロールしてドローやフェードを打ち分けており、弾道計測データを活用して自分の球筋を微調整することも行われる。

ギア効果

定義・特徴:クラブフェースの芯を外したインパクト時に生じる、ボールのスピン特性に関する現象。特にドライバーなど大型ヘッドのウッドクラブで顕著で、ボールがフェース中央を外れてヒール(根元)側やトウ(先端)側に当たると、クラブヘッドが回転しボールに逆方向のスピンを与える。このギアの噛み合いのような作用により、ミスヒット時でも飛球の曲がり幅を自動的に抑えたり、弾道の上昇下降を補正する効果がある。

補足:ギア効果の代表的な例として、ドライバーのフェース面にはバルジ(横方向の緩やかな丸み)とロール(縦方向の丸み)という曲面設計がされている。例えばトウ側でボールを打つとフェースが右に押し開くが、ギア効果でボールにはフック回転(左回転)が生じ、結果的に曲がり過ぎを緩和してくれる。同様にヒール側のヒットではフェースが左に閉じるがボールにはスライス回転がかかり、右への曲がりを減少させる。また上下方向でも、芯より上に当たればスピン量減少(低スピンの強い弾道)効果、下に当たればスピン量増加(高スピンの上がりやすい弾道)効果が生じる。ギア効果によってミスの影響を軽減するために、特にウッド系クラブのフェースは意図的に丸みを持たせて設計されている。

飛距離・速度系用語

初速(ボール初速)

定義・特徴:ボールがインパクト直後に飛び出していく速度のこと。ボールスピードとも呼ばれ、単位はm/s(メートル毎秒)やmph(マイル毎時)で表される。初速は飛距離を決定する主要因の一つで、一般にヘッドスピード(クラブの速度)が速く、かつミート率が高い(芯に当たる)ほどボール初速は大きくなる。

補足:ボール初速はドライバーで最も速くなり、プロのドライバーショットでは初速70m/s(約250km/h)近くに達することもある。ルール上、ゴルフクラブの反発係数(COR)は規制されているが、クラブやボールの技術向上によりアマチュアでも以前より高い初速を出しやすくなっている。初速を上げることは飛距離アップに直結するため、スイング改良や筋力強化などでヘッドスピードを伸ばす努力がなされる。ただし初速が上がってもミスショットでは意味がなく、安定性とのバランスが重要である。

ヘッドスピード

定義・特徴:スイング時のクラブヘッドの速度。特にインパクト直前のヘッドの動きの速さを指し、単位は通常m/sやmphで表す。ヘッドスピードが速いほどボールに大きなエネルギーを与えられるため、一般的には飛距離が伸びる傾向がある。

補足:ヘッドスピードは体力や柔軟性、スイング技術などに影響される。男性アマチュアのドライバー平均ヘッドスピードは約40~45m/s程度、女性では30m/s前後と言われる。ヘッドスピードを向上させるには筋力トレーニングや効率的な体の使い方、シャフトのしなりを活かしたスイングなどが有効である。ただし無理にヘッドスピードを上げようとするとミート率の低下やスイングのバランス崩壊を招きかねず、適正な範囲で安定して振ることが大切である。

キャリー

定義・特徴:ボールがティーや地面から打ち出されて着地点まで飛んだ距離のこと。着地するまでの空中距離を指し、単位はヤードやメートルで計測される。キャリーはショットの飛距離性能を測る基本的な要素であり、例えば「ドライバーのキャリーが250ヤード」というように使われる。

補足:キャリー距離はクラブの種類やショットの高さ、スピン量によって変化する。高弾道で適切なスピンが入ったショットはキャリーが伸びやすい。キャリーが足りないと池やバンカーを越えられないなどコース攻略に支障をきたすため、各クラブで自分が出せる平均キャリーを把握しておくことが重要である。なお飛距離自慢をする際には総飛距離ではなくキャリーで語るほうがフェアとも言われ、キャリーの重要性が強調されることも多い。

ラン

定義・特徴:ボールが着地してから止まるまでに地上を転がった距離のこと。地面に落ちてから先に進む「転がり距離」を指し、単位はヤードまたはメートルで表す。ランの量は着地時のボールスピードや着地角、地面の硬さや傾斜によって大きく左右される。

補足:一般に低い弾道で着地角が小さいショットほどランが出やすい。ドライバーなどで飛距離を稼ぎたいときはキャリーだけでなくランの量も重要であり、フェアウェイが硬ければランが伸びてトータル飛距離が増える。ただしグリーン上ではランはボールを止めにくくする要因なので、アイアンやウェッジではスピンをかけて着地後のランを最小限に抑えることが求められる。天候や季節によってもランの出方は変わり、夏場の乾いたフェアウェイでは大きく転がり、雨上がりのコースではほとんどランが出ない場合もある。

総飛距離(トータル)

定義・特徴:ショットの飛距離の総合値で、キャリーとランを合計した距離のこと。ボールがティーや打地点から最終的に止まった場所までの距離を指し、単位はヤードやメートルで示される。例えば「ドライバーで総飛距離300ヤード飛んだ」のように使われる。

補足:総飛距離はコース上でボールがどこまで進んだかを示す実質的な距離だが、地形や気象条件に左右される面が大きい。キャリーが同じでも硬い地面ではランが増えて総距離が伸び、軟らかい地面では総距離が短くなる。ドラコン大会などではランを含めた総飛距離が競われるが、実戦のコースマネジメントではキャリー重視かラン重視かを状況によって考える必要がある。プレーヤーは自身のキャリーとランのバランスを把握し、総飛距離から逆算して狙い所を決めるといった戦略を立てる。

ミート率(スマッシュファクター)

定義・特徴:インパクト時のエネルギー伝達効率を示す指標で、ボール初速をヘッドスピードで割った比率のこと。スマッシュファクターとも呼ばれ、この値が大きいほど効率よくボールにエネルギーが伝わったことを意味する。例えばヘッドスピード40m/sでボール初速60m/sならミート率は1.50となり、これはドライバーにおける理想的な数値に近い。

補足:ミート率はショットの芯の捉え具合やクラブ性能を反映する指標である。プロや上級者はミート率が高く、ドライバーなら1.45〜1.50前後、アイアンでも1.3前後を出す。一方で芯を外したりダフったりするとミート率は極端に低下する。ミート率を上げるにはスイングの再現性を高めることと、適切なクラブ選択(自分に合ったヘッドやシャフト)も重要になる。練習場の計測器などで自分のミート率をチェックすれば、飛距離向上のヒントを得られるだろう。

球筋・ミスショット関連用語

スライス

定義・特徴:ボールが右方向(右打ちの場合)に大きく曲がって飛ぶ球筋。インパクトでフェースが開いて当たるなどして右回転(サイドスピン)が強くかかることで生じる。スライスした球は高く吹き上がりやすく、意図しない右曲がりのミスショットとして初心者にもっとも多い球筋の一つである。

補足:スライスは飛距離をロスしやすく、右のOBや林に打ち込む原因にもなるためゴルファーにとって悩みの種である。原因はフェースの開きだけでなくアウトサイドインのスイング軌道やカット打ちなど複合的だが、基本的にはインパクト時のフェース向きを改善し軌道をインサイドから振ることで修正できる。上級者でもコントロール不能な大スライスはミスだが、わずかに右に曲がる「フェード」は戦略的に使われる球筋であり、スライスとの違いは曲がり幅と意図の有無である。

フック

定義・特徴:ボールが左方向(右打ちの場合)に大きく曲がって飛ぶ球筋。フェースが極端に被って当たったりインサイドアウトの軌道過多により強い左回転がかかることで生じる。フックボールは低く押さえ気味の弾道になりやすく、右に出てから大きく左に曲がるケースや、真っ直ぐ出た後急激に左へ逸れるケースがある。

補足:フックもまた意図しない場合は大きなミスショットとなり得る。左へのOBや林を招き、特に距離が出る分だけ危険度が高い。フック癖のある人はスイングで手先が返りすぎていたり、極端なインからの軌道になっていないか点検が必要だ。ただしフック系の球筋自体はパワフルでランも出やすいため、上級者はコントロールされたドローボール(軽いフック)を武器にすることも多い。要は曲がり過ぎたフックが「ミス」であり、適度なフックは「ドロー」として区別される。

フェード

定義・特徴:ボールが緩やかに右へ曲がる球筋(右打ちの場合)。スライスほど曲がり幅が大きくなく、意図的に打たれるコントロールショットであることが多い。インパクトでフェースをやや開き気味にしつつスイング軌道をコントロールすることで生じる軽い左回転の球で、風に強く安定した弾道とされる。

補足:フェードボールはグリーン上で止まりやすく、ピンをデッドに狙う際に好まれる球筋である。プロの中には常に軽いフェードを持ち球とし、左右のブレを抑えている選手も多い。フェードを打つにはアウトサイドイン気味のスイングや目標に対してフェースを開くなどのテクニックが用いられるが、あくまで安定した小さな曲がりに留めることが重要となる。なお、フェードの逆はドローであり、プレーヤーの持ち球はフェード派とドロー派に大別される。

ドロー

定義・特徴:ボールが緩やかに左へ曲がる球筋(右打ちの場合)。フックほど急激ではない軽い右→左のカーブで、多くの場合プレーヤーが意図して打つコントロールショットである。適度なインサイドアウト軌道とフェースの閉じ具合によって生まれる球で、力強く比較的低めの弾道になりやすい。

補足:ドローボールはランが出やすく飛距離を稼ぎやすい球筋とされる。ドローを得意とするプレーヤーはティーショットで大きな距離を出すことができるが、曲がりを抑えてコントロールする技術が求められる。引っかけ(プルフック)にならない範囲で軽いドローを打つには、インパクトでフェースをわずかに被せつつ振り抜く必要がある。一般にドローの持ち球を持つゴルファーはフェード派よりも飛距離が出る傾向があるが、左右のブレが大きくなりすぎないよう注意が必要である。

プッシュ(プッシュアウト)

定義・特徴:狙いに対してボールが真っ直ぐ右方向へ飛び出すミスショット(右打ちの場合)。ボールは右に飛び出した後ほとんど曲がらず、そのまま右方向へ一直線に飛んで行く。フェースが開いたままスクエアに当たり、なおかつスイング軌道が目標より右を向いているときに起こりやすい。

補足:プッシュアウトは方向の誤りという点でミスではあるが、ボール自体はほぼストレートに飛んでいるため比較的ましなミスとも言える。大きな曲がりがない分OBなどのリスクはスライスやフックより低いものの、ターゲットを外れているため結果的にはトラブルになる可能性がある。プッシュの矯正にはアドレス時の目標方向の確認や、インパクトでフェースをしっかりターゲットに向ける意識が有効である。

プル

定義・特徴:狙いに対してボールが真っ直ぐ左方向へ飛び出すミスショット(右打ちの場合)。ボールは左に出た後ほぼ曲がらず、そのまま左方向へ飛んで行く。フェースが閉じたままスクエアヒットし、スイング軌道が目標より左に振られていると起こりやすい症状である。

補足:プルもまた方向のミスショットだが、球筋自体に大きなスライスやフックは含まれないため比較的ミスの中では軽度といえる。ただし意図しない左方向へのショットはグリーンを大きく外したりOBになる危険があり無視できない。プルの対策としては、アウトサイドイン軌道を修正したり体の開きを抑えてインパクトするなどが挙げられる。プッシュ同様、まっすぐ飛んでいるだけに自分ではタイミングが合っている錯覚があり修正に時間がかかることもある。

ストレート

定義・特徴:インパクトから着地までほとんど左右に曲がらず、狙った方向に真っ直ぐ飛ぶ理想的な球筋。フェースの向きとスイング軌道が正しく合致した時に生まれる弾道で、スライスやフックといった横方向のブレがない。まっすぐピンやフェアウェイセンターを捉えるストレートボールはすべてのゴルファーが目指す基本の球筋である。

補足:完全なストレートボールは実は意図的に打つのが難しいとも言われる。わずかなフェースの開閉や軌道のズレで球はフェードやドローになるため、プロでも「持ち球はフェード/ドローだが狙い通りに曲がって結果ストレートに近い球になる」というケースが多い。それでも基礎的なスイング技術を磨けば曲がりの小さいほぼストレートな球を打つことは可能であり、アマチュアでも狭いホールでOBを避けたい時などストレートボールを意識して打つ場面がある。

シャンク

定義・特徴:インパクトでボールがクラブヘッドのホーゼル付近(ネック部分)に当たってしまい、極端な方向に飛び出すミスショット。右打ちの場合、ボールは右斜め前方(ほぼ真右と言ってよい方向)に飛び出し、まともに空中を飛ぶことすらままならない。俗に「根っこに当たった」とも表現され、ゴルファーに恐れられる最悪のミスの一つである。

補足:シャンクは突然出始めると止まらなくなるケースもあり、「シャンク病」と呼ばれるほどゴルファーを悩ませる。原因はアドレスとのズレ(体から離れて当たる)、体の起き上がり、手元が浮くなど様々だが、一度シャンクが頭をよぎると心理的不安から再発しやすい。対策としては、アドレスでボールに近づきすぎないようにしたり、インパクトでフェースのトウ側(先端側)で捉える意識を持つことなどが有効。シャンクが出始めたら、一旦短いクラブでゆっくりスイングし感覚を立て直すといったリセットも有効である。

トップ

定義・特徴:クラブがボールの上部に当たってしまい、低く強い打球にならずに地面を這うような球や小さく跳ねる球になるミスショット。「トップする」「トップ気味に当たる」などと言い、ボールの上半分を叩いてしまうことで生じる。トップした球は十分に浮かず、結果として飛距離が大きく不足したり狙い所まで届かないことが多い。

補足:トップは初心者から中級者まで幅広く起こるミスで、主な原因はインパクト前に体が起き上がったりヘッドアップしてしまうこと、スイングの最下点がボール手前に来ず手前でクラブが浮いてしまうことなどが挙げられる。トップによって生じた打球は「ゴロ」や「ライン出し」とも表現されるが、意図的な低いライン出しショットとは異なりコントロールできないミスとして扱われる。対策としては、ひざの伸び上がりを抑え最後までボールを凝視する、体重移動を適切に行いダウンブロー気味に打つなどが有効である。

ダフリ

定義・特徴:クラブヘッドがボールに当たる前に地面(芝)を叩いてしまい、距離が出ないミスショット。「ダフる」と動詞でも表現され、インパクトが手前の地面に入ってしまうことでボールへのエネルギー伝達が損なわれる。ダフった球は高く上がりすぎたり極端に飛距離が落ちたりし、最悪の場合ボールが数メートルしか進まないこともある。

補足:ダフリは初心者によく見られるミスだが、難しいライやプレッシャー下では上級者でも起こしうる。主な原因は体重移動の失敗(右足体重のまま打ってしまう)、ボール位置が不適切、腕の力みなどである。ダフリが発生すると大きなディボット(ターフを削り取った跡)ができるためショットの痕跡で判別しやすい。ダフリを防ぐには、スイング中に体重をしっかり左足に移動させること、ボール位置を適正にすること、クラブのソールを滑らせる意識で振ることなどが有効だ。

チョロ

定義・特徴:ボールがほとんど前に飛ばず近距離に転がってしまうミスショット。主にティーショットや長いクラブでのミスを指すことが多く、スイング後にボールが力なく数メートルからせいぜい数十ヤード先にチョロチョロと転がる様子からこの名が付いた。トップの一種ではあるが、特にクラブがボール上部をかすめてしまいほとんど空振りに近い当たり損ねで生じるケースを指す。

補足:チョロはゴルフ初心者が最初のティーショットでやってしまう典型的なミスとも言われる。本人の精神的ダメージも大きく、周囲から冷やかされることもあるため何としても避けたい失敗だ。要因としてはトップと同様に頭が上がるなどのフォーム不良や、力み過ぎてスイングが崩れることが挙げられる。チョロを防ぐにはリラックスしてボールをしっかりミートする意識を持つことが重要であり、もしチョロが出てしまった時は深呼吸して気持ちを切り替えることが大切である。

テンプラ

定義・特徴:主にドライバーのティーショットで、ボールが真上に近い角度へ高く上がり、距離がほとんど出ないミスショット。フェースの上部やクラウン付近でボールを打ってしまうことで発生し、打球は放物線ではなくほぼ垂直に近い軌道を描いて落下する。空高く「天ぷら」のように舞い上がることからこの名前で呼ばれる。

補足:テンプラは飛距離が出ないだけでなく、クラブのクラウン(ヘッド上面)にボールの痕が付いたり傷がついたりすることが多く、精神的ダメージも大きいミスである。原因はティーアップが高すぎたり、アッパーブローが強すぎてボールの下にクラブが潜り込みすぎることなどが挙げられる。対策としては適切な高さのティーを使用し、スイング軌道を安定させることが有効だ。なお英語ではこのようなミスをしばしば「sky shot(空に飛ぶショット)」と呼ぶ。

チーピン(ダックフック)

定義・特徴:ボールが低い弾道で鋭く左に曲がって飛ぶショット(右打ちの場合)。ティーショットで発生しやすい極端なフックボールで、打ち出し直後から左方向へ直角に近い急カーブを描きながら飛んでいく様子から俗に「チーピン」と呼ばれる(英語での俗称はダックフック)。

補足:チーピンは中上級者でも突如出ることがあり、OBになりやすい最も危険なミスショットの一つとされる。低い弾道で飛び出し着地後も大きく左へ転がっていくため、林やOBゾーンに消えるケースが多い。主な原因は極端なインサイドアウトのスイング軌道と過度なフェースのクローズ(被り)であり、ボールに強烈な左回転がかかることで発生する。対策としてはグリップの握りを見直しフェースの被りを抑える、スイング軌道を修正するなどが有効。語源には諸説あるが、「チーピン」の由来は麻雀の用語(七筒=チーピン)からとも言われている。