ヤマハのゴルフクラブ事業は、ヤマハ株式会社(東証プライム: 7951、楽器・スポーツ用品の総合メーカー、本社静岡県浜松市)の一部門として運営されてきました。1982年にゴルフクラブ事業に参入し、1988年にフラッグシップとなるinpres(インプレス)シリーズを発売、以降44年にわたり国内市場を中心に展開していました。なお、しばしば混同される「ヤマハ発動機株式会社(東証プライム: 7272)」とは別法人で、ヤマハ発動機はバイク・船外機などの輸送機器が主業のためゴルフ事業は持ちません。
ブランドの強みは楽器・音響工学で培った振動解析の知見をクラブ設計に応用してきた点で、特にinpres系のドライバーはインパクト時の音と振動の制御に独自のチューニングが施されていました。ただしヤマハ株式会社は2026年2月4日にゴルフ用品事業の終了を発表し、2026年6月30日をもって同事業を終了しました。以降は新製品の開発・発売と国内販売店への出荷が行われておらず、既存製品のアフターサービス(修理・補修パーツ・各種問い合わせ)のみ、同社規定の保有期間内まで継続されています。代表シリーズとなったinpresとアスリート向けのRMX(リミックス)は44年の歴史を残し、市場には引き続き既存ユーザーと中古流通が一定数存在します。
撤退発表前の現行ラインナップは、シニア・女性層を主要ターゲットとするinpresシリーズ(inpres UD、inpres DRIVESTARなど)と、アスリート寄りのRMX(リミックス)シリーズの2層構成でした。inpres UD+2は番手の表示よりも2番手分長い飛距離を狙う設計で、シニア・女性層に長年支持されました。
アイアンも同様にinpresシリーズ(やさしさ重視)とRMXシリーズ(中・上級者向け)の2層構成。RMXシリーズはヘッド単体での販売とシャフトの自由組み合わせができるコンポーネント設計が大きな特徴で、フィッティング前提でクラブを組み立てたいゴルファーに向いていました。価格帯はドライバー単品で6〜10万円、RMX系のヘッド単体は5〜7万円が中心でした。
契約プロは藤田寛之(長年のフラッグシップ選手、男子レギュラーツアーで複数勝)、有村智恵(女子)など。国内ツアー寄りの選手構成で、PGAツアーでの存在感は限定的でしたが、国内市場ではinpresのシニア向けとRMXのアスリート向けで明確に住み分けたブランドポジションを維持していました。2026年6月末の事業終了後、新規購入の選択肢は流通在庫と中古流通に限られています。
ゴルフスケールに登録された全231本のクラブから、ヤマハのスペック分布図を市場全体と比較しています。
ヤマハは全体的に市場よりやや低価格寄り
市場中央値を 0 とした ヤマハの価格差(直近3年・メーカー公式価格(定価または公式ストア価格) / 純正シャフト構成ベース。価格未登録モデルは集計から除外)
ヤマハは市場標準的なロフト設定
値が小さいほどストロングロフト=飛び系の傾向
ヤマハは市場中央値より10g以上軽量。シニア・女性向けの振りやすさ重視
軽いほど振りやすく、重いほど球が安定する
ヤマハのシャフトを発売年順に並べた年表。歴代モデルから廃番モデルまで横断比較できます。
本間ゴルフがBERES(プレミアム装飾+手作業仕上げ)でシニア・経営者層プレミアムを取りに行くのに対し、ヤマハは楽器メーカー発の振動解析・音響工学を活かしたミドル帯プレミアムというキャラクターでした。価格帯はヤマハinpres(6〜10万円)と本間T//WORLD(7〜10万円)が近い帯で、装飾性ではなく機能性で選ぶならヤマハ、装飾+プレミアム素材なら本間という棲み分けでした。ただしヤマハは2026年6月末で事業終了となったため、新品を選ぶ選択肢としては本間に分があります。
ゼクシオがヘッドスピード35m/s以下のシニア層に特化した軽量・高弾道設計であるのに対し、ヤマハinpresはシニア向け(UD系)と中級者向け(DRIVESTAR系)の幅広いターゲット、さらにアスリート向けのRMXを別系統で持つマルチターゲット構成でした。新品で買えるシニア向けという観点では現在はゼクシオが本流、ヤマハは流通在庫と中古市場で選ぶ形になります。
マジェスティが超プレミアム帯(15〜50万円超)の装飾性ブランドであるのに対し、ヤマハはミドル〜ミドルアッパー帯(6〜10万円)の機能性ブランドでした。ヨネックスもヤマハと同じく国内スポーツメーカー発の中堅プレミアムで、ヤマハの事業終了後は同カテゴリーで現行新品が買える数少ない国内ブランドという立ち位置です。