どのホールに行っても、なぜか向かい風な気がする
半分ホント 風は追いかけてこない。ただし向かい風の損は追い風の得の約2倍で、痛いほうだけが記憶に残る
2番ホール、アゲンスト。5番ホール、アゲンスト。9番で振り返ったら、旗はさっきと同じ方向になびいています。おかしい。反対を向いて打っているはずなのに。 たぶん、あなただけではありません。ただし、風のほうが追いかけてきているわけではないんです。
18ホール全部が向かい風、ということは起きません。コースは行って戻ってを繰り返すので、どこかで必ず追い風のホールを通っています。上がってから「今日はずっとアゲンストだったね」と言い合っている二人が、前半に追い風で乗せたホールをどちらも覚えていない。よくある光景です。
なのに記憶のほうは「ずっと向かい風」で残ります。ここには、そう残るだけの理由があります。同じ強さの風でも、向かい風で失う距離と、追い風で得する距離が釣り合っていないからです。損のほうが、はっきり大きい。
だから向かい風のホールだけが事件になって、追い風のホールは何も起きなかった日として消えていきます。風向きを覚えているつもりで、実は打たれたホールを覚えている。そういう錯覚です。ただ、この錯覚には使い道があります。損と得が釣り合っていないなら、番手の足し方と引き方も、同じ幅にしてはいけないということですから。
向かい風で減る距離は、同じ強さの追い風で増える距離の、およそ2倍です。
弾道計測メーカーが、ツアー選手の6番アイアンの打ち出しをそのままにして、風だけを入れ替えた数字を出しています。41ヤード取られて、返ってくるのは23ヤード。同じ強さの風で、これだけ差がつきます。
| 風 | キャリー | 無風との差 |
|---|---|---|
| 無風 | 184yd | — |
| 向かい風4.5m/s | 166yd | -18yd |
| 向かい風9m/s | 143yd | -41yd |
| 追い風4.5m/s | 198yd | +14yd |
| 追い風9m/s | 207yd | +23yd |
行きと帰りで打ち消し合う、という感覚がそもそも間違いなんです。往復すればチャラになりそうなものですが、実際には損だけが残ります。ハーフを終えてスコアを見ながら「今日は風にやられた」と思うのは、気のせいではありません。差し引きで、本当に負けています。
向かい風のとき、ボールにとっては「自分がもっと速く飛んでいる」のと同じことが起きています。
空気がボールに与える力は、ボールの速さではなく、ボールと空気のすれ違う速さで決まります。向かい風はこのすれ違いを速くするので、前に進むのを邪魔する力と、上に浮かせる力が、同時に強くなります。だから向かい風の球は失速しながら、余計に高く上がる。高く上がったぶんは、前に進んでいません。
追い風はその逆です。すれ違いが遅くなるので邪魔する力は減りますが、浮かせる力も一緒に減ります。押してもらえる代わりに、浮かなくなって早めに落ちてくる。だから得が伸びません。
ちなみに「向かい風だとスピンが増える」とよく言われますが、増えていません。増えているのは、同じスピンから生まれる浮かせる力のほうです。球がふけて見えるので、スピンのせいだと感じるだけです。
向かい風のホールは事件になり、追い風のホールでは何も起きません。
向かい風で40ヤード足りなければ、手前のバンカーです。グリーンを外して、寄らなくて、ボギー。しっかり覚えます。追い風で伸びたホールは、1つ小さい番手が普通に乗って、普通に2パットで終わる。覚える理由がありません。同じ「風のホール」でも、片方だけがスコアカードに跡を残します。
同じ大きさの出来事でも、悪いほうが強く残る。これは心理学で繰り返し確かめられているくせで、ゴルフに限った話ではありません。しかも向かい風は顔に当たって音もするので、吹いていること自体に気づきやすい。追い風は背中から来るので、たぶん半分は気づかないまま打っています。気づいた風だけを数えれば、向かい風のほうが多くなって当たり前です。
こうして、罰を受けたホールだけが残ります。「今日はどこへ行ってもアゲンストだった」の正体は、風向きの記録ではなく痛かったホールの記録です。
向かい風は思ったより多めに、追い風は思ったより控えめに見積もるのが正解です。
上の数字をならすと、目安はこうなります。向かい風は風速1m/sにつきキャリーの2%を足す。追い風は1.5%を引く。150ヤード狙いで風速5m/sなら、向かい風は165ヤードのクラブ。同じ5m/sの追い風で引くのは、11ヤードだけです。
ただしこれは6番アイアンくらいの高さの球での目安です。球が高い人やスピンの多い人はもっと持っていかれますし、低い球なら小さくなります。「風速◯mなら◯番手」と決め打ちできるものではありません。
そして事故が多いのは、実は追い風のほうです。得は損の半分しかないのに、期待だけは同じ大きさで持ってしまう。2番手下げて、手前のバンカーに届かない。追い風で下げるなら1番手まで、と決めておくほうが安全です。
風の日にやるべきなのは、強く振ることではなく、低く打つことです。
向かい風で強く振ると、スピンが増えます。スピンが増えると浮かせる力が増えて、球はもっと高く上がり、もっと手前に落ちます。向かい風がすでにやっていることに、自分でもう一段足していることになる。押し込もうとするほど、押し戻されます。
やることは3つだけです。1〜2番手大きいクラブを短く持つ。振り幅を8割に抑える。フィニッシュを低く取る。打ち出しとスピンが下がって、風に噛まれている時間が短くなります。
追い風は逆に、止まらないことを計算に入れます。落ち際が浅くなるぶん、グリーンでよく走る。ピンをデッドに狙うより、手前から転がす前提で番手を選ぶほうが、結果として近くに残ります。
風は距離を変えているのではなく、球の高さと落ち方を変えている。番手は結果で、弾道が原因です。
目安は「風速1m/sにつきキャリーの2%を足して、その距離が打てるクラブ」です。5m/sの向かい風で150ヤード狙いなら、165ヤードのクラブ。番手にすると1〜2番手ですが、球の高さとスピンで変わるので固定はできません。迷ったら大きめを短く持って、軽く振るほうが外しません。
同じ風速の向かい風で失う距離の、半分くらいしか得しません。ツアーの6番アイアンでは、向かい風で41ヤード減るのに対し、追い風で増えるのは23ヤードでした。「アゲンストの逆だから同じだけ飛ぶ」で計算すると、確実にショートします。
天気予報の風速は10分間の平均値で、瞬間的にはその1.5倍くらいまで吹きます。旗がいちばん強くなびいた瞬間で番手を決めると、たいてい取りすぎです。目安として、向かい風で歩きにくい・傘がさせないと感じたら10m/s以上。ここまで来るとキャリーは2割減の世界になります。
横風が変えるのは距離ではなく曲がり幅です。斜めの風は向かい風の成分と横の成分に分けて考えて、真横に近いほど番手はいじりません。そのうえで、高い球ほど大きく流されます。番手を動かすより、風下側に広く狙うほうが安全です。
最終更新: 2026-08-30