ゴルフの日の朝、決まって便意が来る。しかも降りられない場所で
半分ホント 便意は本物。ただし主犯は緊張ではなく、起床だけが前倒しになった時間割のほう
朝5時に起きて、コンビニで缶コーヒーを買って、高速に乗る。15分くらい走ったあたりで、来ます。次のサービスエリアまで何kmあるのかは、分かりません。 たぶん、あなただけではありません。そしてこれ、よく言われる「緊張のせい」ではないんです。
先に答えを書きます。ゴルフの日の朝に来るあれは、気のせいではありません。本当に起きています。
ただ、原因はよく言われる「緊張」ではありません。理由はかんたんで、時刻が合わないんです。
緊張がいちばん強くなるのは、1番ティーに立った瞬間のはずです。でも実際に来るのは、たいてい高速道路の上ですよね。しかも1番ティーに着くころには、なぜか一度おさまっている。順番が逆なんです。
もうひとつ。仲間内の、スコアもろくに付けないようなラウンドでも同じように来ます。緊張していないのに来るなら、緊張が原因という話には無理があります。
では犯人は誰か。今朝、いつもより2時間早く起きたことです。拍子抜けするかもしれませんが、ここから順に説明します。
「ゴルフだから」の話に入る前に、「朝だから」の分を差し引いておきます。
大腸は、寝ているあいだはほとんど動きません。これは大腸の中の圧力を丸1日ぶん記録した研究で確かめられています。そして目が覚めた瞬間、その動きが3倍ほどに跳ね上がる。食事で上がる分より大きいのです。腸にとって1日でいちばん大きな出来事は、食べることではなく「起きること」でした。
実際、一般の人を対象にした調査でも、排便は朝に集中していました。ゴルフをしない人も、ちゃんと朝に出ています。
だから、聞くべきことはこう変わります。なぜ朝に来るのか、ではありません。なぜゴルフの日だけ、その朝のピークが家の外にズレるのか。答えは次の章です。
起床、朝食、コーヒー。どれも腸のスイッチですが、大事なのは押してすぐ効くわけではないということです。少し遅れてから効いてきます。
コーヒーなら、飲んで数分で大腸の下のほうが動きはじめ、そのまま30分以上続きます。効きめの強さは食事1食ぶんに相当します。朝食も同じで、胃に入ってから少し遅れて大腸が動きだす。しかもこの反応は、朝がいちばん強く出ます。
ここにゴルフの日の事情が乗ります。早くなるのは起きる時刻だけで、効くまでの時間は早くなりません。おまけに、普段なら1時間以上かけてバラバラに済ませる起床・コーヒー・朝食を、30分ほどに詰め込む。3つの効きめが、そろって同じ1時間に集まってきます。
その1時間が、たまたま車の中というだけです。時間割がズレるから来るのではなく、ズレないから来る。これがこの現象の正体です。
では緊張は無罪なのかというと、そうでもありません。
ストレスがかかったときに出るホルモンを実際に投与すると、大腸の動きは強まります。しかもその反応は、もともとお腹が弱い人ほど大きく出ます。日本の診療ガイドラインも、この体質にストレスが関わることを認めています。緊張でお腹が動くこと自体は、本当のことです。
ただ、それだけでは「毎回、決まって移動中」の説明がつきません。緊張が原因なら、車で強まって1番ティーで最強になるはずですが、実感は逆でしょう。だから緊張は共犯です。時間割が引き金を引いて、緊張が音量を上げている。この順番だと思ってください。
ちなみに「車の振動が腸を揺すって便意になる」という説をよく見かけます。調べましたが、裏づけになる研究は見つかりませんでした。否定はできませんが、この記事では根拠のある話としては扱いません。
この記事でいちばん伝えたいのが、ここです。
便意そのものは、実はそんなに粘りません。我慢していると直腸の壁がゆるんで、いったん引きます。次の波が来るまでの数分から十数分は、静かになる。心当たりがあるはずです。
なのにサービスエリアに着くまでずっとしんどい。引いていないのは便意ではなく、「また来たらどうしよう」のほうだからです。これは不安なので、降りられる場所に着くまで終わりません。しかも「来るかどうか読めない」状況ほど、脳の反応は強く出ることが分かっています。
お腹が弱い人の治療研究では、トイレに行けない状況を避ける行動そのものに手をつけたところ、症状も不安も一緒に軽くなりました。裏を返せば、避けているうちは続くということです。
そしてゴルフは、この条件をほぼ全部そろえています。高速道路、カート、後ろの組、4時間半、そして言い出しにくさ。
やることは2つです。時間割を家に寄せ直すことと、逃げ道を先に決めておくこと。
8時スタートなら、こんな逆算になります。数字は目安なので、自分の朝に合わせてずらしてください。
| 時刻 | やること |
|---|---|
| 前夜 | 酒は控えめに。遅い時間の脂っこい食事も避ける |
| 4:45 | 起床。まず水を1杯 |
| 5:00 | コーヒーと朝食。家で済ませる |
| 5:30 | ここを空けておく。トイレのための時間 |
| 6:00 | 出発 |
コツは「早く起きる」ことではありません。起きてから家を出るまでの間隔を、できるだけ空けることです。同じ時刻に起きても、15分後に家を出てしまえば、効きめは全部車の中で来ます。
そしてコーヒーは家で飲む。コンビニで缶コーヒーを買って車で開けるのは、いちばんやってはいけない手順です。いちばん強いスイッチを、いちばん降りられない場所で押していることになります。
もうひとつが逃げ道です。高速道路の休憩施設は「25〜35kmおきなら、もよおしても無理なく待てる」という考え方で置かれています。ただし、それ以上あいてしまう区間が全国に66あります。出発前に、次に降りられる場所をひとつ調べておくだけでいい。「行けない」が「いつでも行ける」に変わります。前の章の不安に効くのは、ほぼこれだけです。
それでも、来るときは来ます。
まず、スタート前にトイレの場所を見ておく。コースガイドかカートナビに載っています。知っているだけで、来てから探す時間がまるごと消えます。
そして知っておいてほしいのが、トイレのためにコースを離れること自体は、ルール違反ではないということ。規則が禁じているのは「プレーを不当に遅らせること」のほうです。病気になった場合には少しの遅れが認められると明記されていますし、売店やクラブハウスへの短い立ち寄りも、正当な遅れの例として挙げられています。問題になるのは、長く止めて後ろの組に影響が出たときだけです。
あとは実務です。同伴者に一言かけて先に打ってもらう。キャディがいるなら遠慮なく聞く(コースでいちばんトイレに詳しいのはキャディです)。カートは置いていかない。
我慢したまま回っても、スコアも進行も悪くなるだけです。いちばんの障害は、体ではなく言い出しにくさのほう。「ちょっとお手洗い」の一言で済むことを、18ホール抱えて回る必要はありません。
次のような場合は、朝の時間割の話ではありません。血が混じる、体重が減っている、夜中に目が覚めるほどの腹痛や下痢がある、熱が出る。どれかがあるなら、ゴルフとは切り離して医療機関で相談してください。ゴルフの日だけ起きるなら生理的な範囲のことが多いのですが、日常的に起きているなら一度きちんと診てもらうほうが早いです。お腹が弱い人自体は珍しくなく、日本でも10人に1人ほどと見積もられています。
やめなくて大丈夫です。変えるのは飲む場所と時刻のほうです。家で早めに飲めば、いちばん効く時間帯を家で使い切れます。逆に、出発直前や車内で飲むのがいちばんよく効きます。悪い意味で。
勧めません。空腹のままスタートすると、後半の集中力のほうに響きます。抜くのではなく前倒しです。起きてすぐ食べて、家を出るまでの時間を確保するほうが確実で、しかもラウンドの中身が犠牲になりません。
一度は引きます。ただし、それを毎回の前提にはしないでください。我慢を習慣にすると便意そのものが鈍くなり、別の問題に変わっていきます。「今日は我慢でしのげた」は、対策として数えないほうがいいです。
離れること自体は違反ではありません。問題になるのはプレーを不当に遅らせたときで、病気になった場合には少しの遅れが認められています。ひと声かけて先に打ってもらえば、実務上もほとんど問題になりません。
たぶん、期待したほどは変わりません。緊張は共犯で、主犯は前倒しになった時間割のほうです。慣れて緊張しなくなっても、5時起きでコーヒーを車で飲む限り、同じ時刻に同じものが来ます。
最終更新: 2026-08-19