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分析コラム

ゴルフ人口はなぜ減ったのか

「ゴルフ人口が3分の1になった」という数字は、ほぼすべてのゴルフ記事に出てきます。ただしその先の「なぜ減ったのか」は、接待ゴルフの消滅・費用の高さ・時間のなさ・若者のゴルフ離れといった通説が並べられるだけで、検証されることはほとんどありません。 このページでは参加人口の減り方を時期ごとに分解したうえで、通説のひとつひとつに賛成・反対の両方のデータをぶつけます。結論を先に書けば、減ったのは「ゴルフをする人の数」であって「ゴルフ場で行われたプレーの量」ではありません。 数値の断定は出典のあるものだけにとどめ、推定は計算過程とレンジを開示します。

問い:1,450万人が480万人になった30年で、何がいつ効いたのか

日本のゴルフコース参加人口の年次推移グラフ。1994年の1,450万人をピークに2024年の480万人まで減少している
日本のゴルフ(コース)参加人口の推移(日本生産性本部『レジャー白書』、1993〜2024年)

日本生産性本部『レジャー白書』が推計するゴルフ(コース)参加人口は、この系列で確認できる最高値が1994年の1,450万人、最新値が2024年の480万人です。30年で約67%減った計算になります。

この数字はよく引用されますが、引用のされ方には2つの問題があります。

このページで検証するのは次の3点です。

  1. 減少はいつ起きたのか(時期の特定)
  2. よく挙げられる5つの要因は、データと整合するのか(仮説の検証)
  3. 同じことが海外でも起きているのか(普遍性の確認)

先に事実を1つ置いておきます。同じ30年で、ゴルフ場の延べ利用者数は1割ほどしか減っていません。参加人口とプレーの総量は、まったく違う減り方をしています。

減少は一様ではない:効いたのは2000年代だった

ゴルフ場の延べ利用者数の年次推移グラフ。1992年度の約1億232万人をピークに2024年度は約8,750万人
ゴルフ場の延べ利用者数の推移(ゴルフ場利用税の課税状況、1957〜2025年度)

参加人口を3つの時期に区切ると、減り方はまったく均一ではありません。

時期 参加人口の変化 年率 同時期のゴルフ場延べ利用者数
1993→2001年(バブル崩壊後) ▲6.9% ▲0.9% ▲9.2%
2001→2010年(2000年代) ▲39.6% ▲5.4% ▲2.3%
2010→2024年(2010年代以降) ▲40.7% ▲3.7% ▲0.6%

参加人口はレジャー白書(暦年)、延べ利用者数はゴルフ場利用税の課税状況(年度)によるもので、時期の対応はおおよそのものです。

ここには通説と合わない事実が2つあります。

つまりこの30年に起きたのは「ゴルフをする人が減り、残った人がより多く回るようになった」という変化です。延べ利用者数はピークの1992年度(約1億232万人)から2024年度(約8,750万人)まででも、減少は約14.5%にとどまります。

同じことを別の角度から見ると、次のようになります。

参加人口 ゴルフ場延べ利用者数 1人あたり年間ラウンド数(推定)
1994年 1,450万人 9,783万人 約6〜7回
2024年 480万人 8,750万人 約16〜18回

1人あたり回数は「延べ利用者数÷参加人口」による推定です(暦年と年度がずれるため近似)。レジャー白書が自己申告ベースで集計している年間平均活動回数は2024年で16.4回、2023年で17.3回で、直近については独立した数字と整合します。

5つの通説を、賛成と反対のデータで検証する

国内ゴルフ用品市場規模の年次推移グラフ。2020年の落ち込みのあと2022年以降は3,000億円前後で推移している
国内ゴルフ用品市場規模の推移(矢野経済研究所、メーカー売上高ベース)

以下の5つは、ゴルフ人口の減少理由としてよく挙げられるものです。それぞれに、支持するデータと支持しないデータの両方があります。

通説 支持するデータ 支持しないデータ
接待ゴルフの消滅 企業の接待需要はバブル後に大きく縮小した 交際費等の支出額は2011年度を底に2023年度まで増えているのに、参加人口は減り続けている
費用が高い コースの年間平均費用は154.7千円(2024年) 同じ期間に用品市場もプレーの総量も落ちていない
時間がない 1ラウンドは移動込みで1日かかる ゴルフの行動者率の低下幅は水泳やボウリングより小さい
若者のゴルフ離れ 実施率は20代2.9%に対し70代8.4% 米国では若年層が参加者増を牽引している
代替娯楽の登場 屋外・有料のレジャーは軒並み縮小した ゴルフの減り方は平均的で、突出してはいない

接待ゴルフの消滅

企業の接待需要が縮んだこと自体は疑いようがありません。ただし国税庁『会社標本調査』でたどれる交際費等の支出額は、2011年度の2兆8,785億円を底に増加に転じ、コロナ禍の落ち込みを挟んで2023年度は4兆1,841億円と、2007年度の3兆3,800億円を上回る水準まで戻っています。同じ2011年から2023年にかけて、ゴルフのコース参加人口は800万人から530万人へ約34%減りました。企業の交際支出とゴルフ参加人口は、この十数年、逆方向に動いています。

ここは慎重に書きます。交際費等は飲食を含む接待支出の全体であり、そのうちゴルフがいくらかを示す統計は存在しません。したがってこのデータは「接待ゴルフが減っていない」ことの証明にはなりません。言えるのは、企業の接待支出全体が縮み続けているという前提は、少なくとも2011年度以降は成り立たないということだけです。1990年代の減少を接待文化の後退で説明することには無理がありませんが、直近の減少をそれで説明することはできません。

費用が高い

レジャー白書によれば、ゴルフ(コース)の年間平均費用は154.7千円(2024年)です。練習場の36.3千円と合わせると年間19万円前後になり、他のレジャーと比べて高額なのは事実です。

ただし費用が離脱の主因なら、ゴルフに使われる金額の総額も減るはずです。実際には、矢野経済研究所が推計する国内ゴルフ用品市場(メーカー売上高ベース)は2024年で2,933億円と、コロナ禍前の2019年を約10%上回る水準にあります。ゴルフ場の延べ利用者数もほぼ横ばいです。費用は「始めない理由」としては効いていても、「やめる理由」としては数字に表れていません。

時間がない

総務省『社会生活基本調査』でゴルフの行動者率(10歳以上)は2016年の7.9%から2021年の6.9%へ、1.0ポイント下がりました。低下は事実です。ただし同じ調査で、ボウリングは7.6ポイント、水泳は5.3ポイント、登山・ハイキングは2.3ポイント下がっています。ゴルフの下げ幅はむしろ小さいほうです。時間の制約はゴルフだけにかかるものではありません。

供給側も動いています。全日本ゴルフ練習場連盟の調査では、インドア施設が2018年の1,070か所から2025年の2,541か所へ2.4倍に増えました。短時間で完結する形態はむしろ増えています。

若者のゴルフ離れ

スポーツ庁『スポーツの実施状況等に関する世論調査』(18〜79歳・有効回収4万件)では、ゴルフ(コースでのラウンド)の実施率は全体で5.4%です(2024年11月調査)。ゴルフ市場活性化委員会がこの調査を年代別に整理した資料では、20代2.9%に対し70代8.4%と、高い年代ほど実施率が高い構造が示されています。世代差は明確に存在します。

ただしこれは「若者はゴルフをしない」というゴルフ固有の性質を意味しません。米国では2010年代後半以降、若年層が参加者増を牽引しています(次の章)。日本の年齢・性別の構成がどう変わってきたかは、それだけで独立した検証が必要なテーマなので、年齢・性別構成を扱ったページで別途検証しています。

代替娯楽の登場

社会生活基本調査で2016年から2021年にかけて増えたのはウォーキング・軽い体操(3.0ポイント増)とサイクリング(0.3ポイント増)で、屋外・有料・時間拘束型の種目は軒並み減っています。ゴルフの減少はその流れの中にあり、突出してはいません。「ゴルフだけが選ばれなくなった」という説明はデータと合いません。

世界共通ではない:米国は2016年を底に増えている

米国のコース内ゴルフ参加者数の年次推移グラフ。2016年の2,380万人から2025年の2,910万人へ回復している
米国のゴルフ参加者数(コース内)の推移(National Golf Foundation)

「ゴルフというスポーツ自体が時代に合わなくなった」という説明が正しければ、同じことがゴルフの主要国でも起きているはずです。実際には起きていません。

National Golf Foundation(NGF)の推計では、米国のコース内参加者数は2003年の3,060万人が歴代最高で、2016年の2,380万人まで約22%減りました。ここまでは日本と同じ方向です。しかしその後は増加に転じ、2025年は2,910万人と、2016年比で約22%戻しています。練習場やシミュレーター施設だけの参加者を含めた総数は、2015年の3,110万人から2025年の4,810万人へ増えました。NGFは2025年の全米ラウンド数も過去最高を更新したとしています。

日米を比べるときに気をつける点があります。NGFの対象は6歳以上、レジャー白書は15〜79歳、スポーツ庁の調査は18〜79歳で、水準をそのまま並べることはできません。比べられるのは方向と変化率です。

その前提で言えることは次のとおりです。

何が分岐を生んだのかは、このページのデータだけでは断定できません。人口構成の違い、コースの供給と価格の柔軟性、コース外で遊べる施設の広がり方の差が候補になります(ここは筆者の見立てです)。米国の総数が10年で5割増えた背景に、シミュレーターや大型練習施設という「コースに行かない参加者」の受け皿があったことは、少なくとも日本との違いとして押さえておく価値があります。

米国ゴルフ参加者数(コース内)の全年推移(2003–2025年) 単位: 百万人

定義: National Golf Foundation(NGF)の年次調査による、その年にゴルフ場で 1 ラウンド以上プレーした 6 歳以上の米国人の推計数(NGF の言う on-course / green-grass golfer)。練習場・ゴルフシミュレーター・Topgolf 等のゴルフエンターテインメント施設でのみプレーした人(オフコース専業)は含まない。オフコースを含めた総数は golf_participation_us_total を参照。NGF は毎年 1〜2 月に前年分を発表する。

注: 対象年齢は 6 歳以上(NGF の表記は "Americans age 6+")。日本のレジャー白書(15 歳以上)とは対象年齢が異なるため、水準の単純比較はできない。

注: 2003 年の 30.6 百万人は NGF が公表している歴代最高値(2026-01-30 の NGF 記事で "all-time record is 30.6 million in 2003" と明記)。2004〜2015 年は無料公開ソースで年次値を確認できなかったため空欄のままにしている(推計・補間で埋めていない)。

注: 2016〜2019 年・2021 年・2023 年は当時の NGF 公式ページが ngf.org 上に残っていないため、NGF プレスリリースの配信・転載(The Golf Wire / WA Golf)または NGF を明示引用した業界報道(Golf Digest / Golf Business News)で数値を確認した。いずれも NGF 発表値の引用であり、統計まとめサイトは使用していない。

注: NGF は調査の見直しにより過去年の値を微修正することがある。年次更新時は過去値の改訂有無も確認すること。

この分析の限界:どこまで言えて、どこから言えないか

ここまでの検証には、はっきりした限界があります。読者が自分で割り引けるように書いておきます。

1. 参加人口は標本調査の推計値である

レジャー白書の参加人口は「参加率×調査対象人口」で求めた推計です。近年の調査は全国15〜79歳の男女が対象で、有効回収は3,300〜3,500件程度。このうちゴルフに該当するのは200人前後にすぎず、年ごとの振れが大きくなります。実際、2015年から2016年にかけて760万人から550万人へ27%減った年がありますが、これを1年で起きた実態の変化と読むのは危険です。

2. 複数の公的統計が短期では一致しない

統計 調査主体 調査対象・規模 ゴルフ(コース)の参加率・実施率
レジャー白書2025 日本生産性本部 15〜79歳・有効回収3,467件 5.0%(2024年)
スポーツの実施状況等に関する世論調査 スポーツ庁 18〜79歳・有効回収40,000件 5.4%(2024年11月調査)
社会生活基本調査 総務省 10歳以上・全国標本 ゴルフの行動者率6.9%(2021年)

水準はおおむね整合していますが、短期の方向は一致しません。レジャー白書では2016年から2021年にかけて参加人口が増えたことになっている一方、社会生活基本調査は同じ期間で行動者率が1.0ポイント下がっています。単年の増減を根拠に原因を語ることはできません。本ページで時期を10年前後の幅で区切ったのはこのためです。

3. 系列の断絶がある

レジャー白書は2008年(対象年)からインターネット調査に移行しています。2000年代の落差には、この調査手法の変更による影響が含まれている可能性があります。前章の時期区分もこの断絶をまたいでいるため、年率は目安として読んでください。

4. 1人あたり回数は推定値である

前章で示した1人あたり年間ラウンド数は「延べ利用者数÷参加人口」による推定で、延べ利用者数は年度、参加人口は暦年という近似が入っています。延べ利用者数はゴルフ場利用税の課税状況からの集計で、2003年度以降は非課税の利用者(18歳未満・70歳以上など)を含む合計です。直近については自己申告ベースの年間平均活動回数(2024年で16.4回)と整合しますが、1990年代の平均活動回数は今回確認できておらず、当時の値は割り算による推定にとどまります。

5. 因果は特定できない

ここで扱った要因は同時に動いており、どれか1つだけを変えた比較対象が存在しません。本ページが示せるのは「この仮説はデータと整合する/しない」までであって、要因ごとの寄与度を定量的に分解したものではありません。

結論:減ったのは人数であって、プレーの量ではない

検証の結果、出典のあるデータで言い切れるのは次の3点です(ここまでが事実です)。

ここからは筆者の見方です。要因の重み付けを、根拠の強さとあわせて書きます。

要因 重み(筆者の見立て) 根拠の強さ
中間層(年に数回だけ回っていた層)の離脱 強い(延べ利用者数と参加人口の乖離)
世代交代と人口構成の変化 中(年代別の実施率差は明確だが、日米差までは説明できない)
接待需要の変化 中(ただし1990年代が中心) 弱い(交際費等は近年増えており、時期も合わない)
費用と時間の制約 小〜中(始めない理由として) 弱い(用品市場もプレーの総量も減っていない)
代替娯楽 弱い(ゴルフだけの現象ではない)

もっとも整合的な説明は、「ゴルフが嫌われた」ではなく「年に1〜2回だけ付き合いで回っていた層が消え、自発的に年十数回回る層が残った」という構造変化です。1人あたりの年間ラウンド数が推定で2倍以上になっていること、参加人口が減り続けるなかで用品市場がコロナ禍前を上回っていることは、いずれもこの説明と整合します。

この見方が正しいなら、参加人口という指標だけを追うと産業の実態を読み違えます。人数が減っても、プレーの総量と支出は保たれてきたからです。逆に言えば、今後の注目点は「人数が戻るか」ではなく「回数と支出を支えてきた層が高齢化した先に何が起きるか」になります。

よくある質問

ゴルフ人口はなぜ減ったのですか?

日本生産性本部『レジャー白書』のゴルフ(コース)参加人口は1994年の1,450万人から2024年の480万人へ減りました。ただし減り方は一様ではなく、大きく減ったのは2000年代以降です。同じ期間にゴルフ場の延べ利用者数は1割ほどしか減っていないため、「プレーする人が一斉にいなくなった」というより「年に1〜2回だけ回っていた層が抜け、回数の多い層が残った」という構造変化として読むほうがデータと整合します。

接待ゴルフがなくなったからではないのですか?

1990年代の減少については説明力があります。ただし国税庁『会社標本調査』の交際費等の支出額は2011年度の2兆8,785億円を底に増加し、2023年度は4兆1,841億円まで戻っています。同じ期間にゴルフのコース参加人口は減り続けているため、近年の減少を接待需要だけで説明することはできません。なお交際費等は飲食を含む接待支出の全体で、そのうちゴルフがいくらかを示す統計は存在しません。

プレー費用が高いことが原因ではないのですか?

レジャー白書によればゴルフ(コース)の年間平均費用は154.7千円(2024年)で、他のレジャーより高額です。ただし費用が離脱の主因であれば、ゴルフに使われる金額の総額も縮むはずです。実際には矢野経済研究所が推計する国内ゴルフ用品市場(メーカー売上高ベース)は2024年で2,933億円と、コロナ禍前の2019年を約10%上回っています。費用は「始めない理由」としては効いても、「やめる理由」としては数字に表れていません。

若い人はゴルフをしなくなったのですか?

スポーツ庁『スポーツの実施状況等に関する世論調査』(18〜79歳・有効回収4万件)でゴルフ(コースでのラウンド)の実施率は全体で5.4%です。ゴルフ市場活性化委員会がこの調査を年代別に整理した資料では、20代2.9%に対し70代8.4%と年代差があります。一方、米国では2010年代後半以降、若年層が参加者増を牽引しています。年代差は日本で確かに存在しますが、ゴルフというスポーツ自体の普遍的な性質ではありません。

海外でもゴルフ人口は減っていますか?

米国は2003年の3,060万人(コース内参加者)をピークに2016年の2,380万人まで減りましたが、その後は増加し2025年は2,910万人です。練習場やシミュレーター施設だけの参加者を含めた総数は2015年の3,110万人から2025年の4,810万人へ増えました(National Golf Foundation)。2000年代の減少は日米に共通していましたが、2010年代後半以降は方向が分かれています。

ゴルフ場や練習場も減っているのですか?

ゴルフ場数はゴルフ場利用税の課税状況でみて2002年度の2,460か所から2024年度の2,172か所へ約12%減りました。練習場は全日本ゴルフ練習場連盟の調査で屋外が2018年の2,519か所から2025年の2,259か所へ減る一方、インドア施設は同じ期間に1,070か所から2,541か所へ2.4倍に増えています。施設の総数というより、形態が入れ替わっている状況です。

ゴルフ人口はこれから増えますか?

本ページでは予測をしません。判断材料として示せるのは、(1)参加人口が減っても延べ利用者数と用品市場は保たれてきたこと、(2)実施率は高い年代ほど高く、支えている層が高齢化していること、(3)米国は2016年を底に回復しており、減少が不可逆とは限らないこと、の3点です。もとになる統計は毎年更新されるため、本ページも公表にあわせて更新します。

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出典

最終更新: 2026-08-03